大判例

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松江家庭裁判所 事件番号不詳 判決

本籍並住居 島根県鹿足郡津和野町大字後田ロノ三二六

芸妓下宿業 川本アヤノ 明治四十一年十二月八日生

主文

被告人を罰金五千円に処する。

右罰金を完納できない時は金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

一、事実

被告人は肩書地で芸妓下宿業を営んでいるものであるが、昭和二十九年七月十一日頃より、同年八月九日頃までの間六回位に亘り、肩書津和野町明月旅館等に於て、自己の抱え芸妓で当時十八歳未満の○田○子(昭和十二年十一月十六日生)をして数人の遊客を相手に売淫させ以て児童に淫行をさせる行為をしたものである。

二、証拠

右の事実は

(1)  被告人の当公廷に於ける供述

(2)  証人○田○子、同小畑達雄の当公廷での各供述

(3)  検察官に対する○田○子の供述調書(謄本)

(4)  検察官に対する被告人の供述調書

により之を認める。

三、法律の適用

被告人の行為は、児童福祉法第六十条第一項、第三十四条第一項第六号に該当するから所定刑中罰金刑を選択しその金額の範囲内で被告人を罰金五千円に処し、右罰金を完納できない時は刑法第十八条により、金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により全部被告人をして之を負担させるのが相当と認める。

四、被告人及び弁護人の主張に対する判断

(一)  被告人及び弁護人は、判示○田○子は自ら二十歳と称し、一見容姿体格が十八歳以上に見えたので、同女が十八歳に満たない児童であることの認識がなかつたと主張するが、人の容姿体格とその年令とは必ずしも一致するものではなく、又被告人が○田○子の戸籍抄本なり食糧通帳を取寄せ調査し同女の年令を確認する等の処置をとらなかつたことは被告人の認めるところであるから、同被告人が右○田○子の十八歳未満であることを知らなかつたとしてこれを知らざるにつき過失がなかつたものと謂うことはできない。

(二)  被告人及び弁護人は、被告人は単に判示○田○子を下宿させるだけで同女は自由意思で売春したもので、被告人が同女に淫行をさしたものではないと主張する。しかし乍ら児童福祉法第三十四条第一項第六号にいう「児童に淫行をさせる行為」とは淫行を強制する等積極的行為は勿論であるが、心身共未成熟である十八歳未満の児童をして淫行をなさしめることを助成し或は原因を与へるものと認められる場合も広く包含するものと解すべきは同法の趣旨から容易に看取せられるところである。而して証拠によれば被告人は判示○田○子に前借をさせ、同女が売淫すればその稼高を折半する約束で自己の経営する所謂置屋に接客婦として住込ましめ、同女をして前記の如く淫行をなすに至らしめたものであることが認められるから被告人と同女との関係は通常の下宿関係ではなく両者の間には雇傭関係あるものというべく被告人が十八歳未満の同女を同女が売淫する目的の下に住込ましめ、その結果同女が売春するに至つた以上、売春するかしないかは同女の自由意思であるにしても、被告人の所為を以て前記「児童に淫行をさせる行為」をしたものと謂わざるを得ない。従つて被告人及び弁護人の右主張は何れも採用しない。

よつて主文の通り判決する。

検察官河合浩関与

(裁判官 小池二八)

理由

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